ユーフォ10:イス取りゲームの人間関係
響け!ユーフォニアム
第10話「まっすぐトランペット」
傾き・ポテト・圧迫感などから解説。
1.夏紀のおごり
2.久美子の過去
3.三年生の香織
4.教師同士
5.終わり
1.夏紀のおごり
画面手前のポテトがへっている。
「やたら食べるのが早い客だった」という設定でなければ、このシーンには時間経過が存在する。
それを量的に視覚的に変化するポテトで示されている。
それに対して、久美子たちの飲み物はほとんど減っていない。
つまり、ある程度の時間があったにも関わらず久美子たちは飲み物に手をつけなかったことになる。
これは会話に集中して飲むタイミングがなかったか、存在を忘れていたためだろう。
夏紀にいたっては、自分の飲み物を遠ざけている。
夏紀は部活に消極的で人間関係もどうでもよさそうなイメージがあったが、実はそんなことはなかった。
短い間だったかもしれないが練習に対する熱意はたしかに感じられ、「オーディションに合格した久美子が罪悪感をもっているのではないか」と思ってわざわざ誘ってくれるいい先輩だった。
そして後ろの「ファストバーガー」のポスターが斜めに傾いている。
この背景には緊張感がない。
もしここで真面目な話をしても、ポスターが気になって説得力がなくなってしまう。
ここでは夏紀が久美子に対して「そんな緊張する話でもないから気楽にきいてよ」と言っているように思える。
また、斜めに傾いているものには不安感もある。
2.久美子の過去
久美子の過去の場面だが、どちらも斜めに傾いている。
これは今にも倒れてしまいそうな久美子の心情を表す。
斜めに傾くということは、何か支えがなくなると立っていられなくなるという不安感をあおる。
そして、この傾き方はポスターと対比されている。
ポスターは左に傾いているが、過去にある物は右に傾いていた。
この傾き方の違いは、現在の久美子の不安は過去にあったトラウマとは違うことを暗示している。
先輩・後輩の関係はたかが一年か二年の人生の差にすぎないが、部活の中ではそれが絶対的な力となって感じられる。
先輩の一人に嫌われるだけで何もかもがうまくいかないような気分になる。
だから久美子は夏紀にやさしくされたとき泣いてしまった。
最後に夏紀は、久美子に「来年は一緒に吹こう」とメッセージをたくされるが、ここにはまだ時間があるという前提が必要になる。
香織はソロオーディションで麗奈に敗北した。
しかし、香織には時間がないため「来年こそ」と言うわけにはいかない。
3.三年生の香織
この場面は非常に息苦しい。
香織がベンチ・ジャングルジム・後輩の優子に囲まれている。
オーディションで負けたのだから仕方ない。
仕方ないのだが、ここで負けたらもうチャンスはない。
しかし自分を慕ってくれる後輩は「まだ諦めるな」と背中を押してくる。
もちろん諦めたくないのだが、ワガママを言ってみんなに迷惑をかけるわけにもいかない。
そんないろんな考えが香織を襲っているように見える。
優子が香織のために、滝先生に不満をぶつける場面。
ここにも圧迫感がある。
優子のリボンが滝先生の首をつかんでるように見える。
4.教師同士
教師も生徒とどのように接していくか悩むこともあるだろうが、教師同士にも人間関係がある。
美知恵先生はドアのある境界線で止まり、そこから進み部屋の中には入らない。
少し離れたところから助言を残すだけだ。
大人が子供に注意するより、大人が大人に注意するときの方がはるかに面倒だ。
直接言えば侮辱されたと怒り、遠まわしに言えば何も気づかない。
5.終わり
以前は恋愛の話だったが、今回の話では人間関係そのものがクローズアップされ、それは教師側にまで及んでいた。
そして人間関係の悪化は、時間のない者が時間のある者によって限りあるイスを奪われることがキッカケだった。
ここには「余裕のある者は少しくらい譲っても困らない」「ずっと頑張ってきたのだから報われるべきだ」という考えがある。
理屈で封じこめるのは簡単だが、納得させたいと思うと困難になる。
けっきょく納得させようと思ったら、よりよい未来を目指して全員の意見を取り入れる
という方法になった。