血界戦線11：無力なホワイト
血界戦線
＃11「Paint It Black」
なぜホワイトはブラックを選んだのか？
けっきょくは、レオナルドよりブラックの方が大切だったということだ。
ではいったい、ホワイトはブラックに対してどのような感情をもち大切だと思うようになったのか。
1.二人が仲良くなるまで
2.ホワイトの後悔
3.終わり
1.二人が仲良くなるまで
いじめられているブラックを上から見下ろすホワイト。
ここでホワイトはブラックを見下している。
ブラックには超能力があったが、ホワイトにはなかった。
しかしホワイトがうらやましがった力をブラックは使わなかった。
だからブラックに嫉妬するのと同時にブラックを「力を使えない臆病者」とホワイトには映っていた。
写真に興味を持ちはじめて、鏡に映った自分を撮影するホワイト。
しかしその写真は光が反射し失敗している。
「自分の視点」と「カメラの視点」を合わせて撮影するのが基本的なカメラの使い方だ。
しかしこの手法では自分自身を撮影することはできない。
カメラを自分に向ける方法ならば可能だが、それは「自分の視点」と「カメラの視点」を一致させないことで可能となる。
つまり正確には「自分の見た景色ではない」からこそ自分自身を撮影できる。
死を強く意識し「自分が死んでも写真は残る」ことを気にいったホワイトだが、逆にその写真に自分を残せないこと、そして自分を撮影したい人間がいないことにも気がついた。
つまりホワイトは何かを残そうとカメラを手にとったが、自分に価値がないことを強調する結果となった。
危険をかえりみずホワイトの大切なカメラを取りにいくブラック。
ここではブラックの精神的な強さが表現されている。
ブラックは臆病だと思っていたホワイトだが、いじめっこに立ち向かいカメラを取り返すブラックを見て勇敢であることに気づく。
ブラックが撮影した、ホワイトの寝顔の写真。
死を意識していたホワイトにしてみれば、おそらく睡眠も死の一種として感じられただろう。
単なる寝顔の写真といえばそれまでだが、ここには「自分では撮れない写真をブラックが撮ってくれた」という救いがある。
ブラックがホワイトの大切なものを守ってくれた一件以来、ホワイトはブラックのことが好きになり二人の仲は近づいた。
手をつなぐ描写を見ればイヤでもそれがわかる。
2.ホワイトの後悔
ブラックがホワイトを守る場面。
ホワイトはブラックを助けることができない。
二人の距離はたしかに近づいていた。
近づいていたのだが、そこには依然として力の差が残ったままだった。
たしかに二人は仲良くなったのだが、力の有無に関しては何の解決もできなかった。
ブラックがホワイトを助けることはできるがその逆はありえない。
ホワイトは何の力もない一般市民と同じだ。
ブラックは大切なカメラを守ってくれたり、自分では撮れない寝顔を撮ってくれたりした。
何度も助けられていたので、ホワイトは「今度こそ絶対に私が助ける」という気概で臨んだはずだ。
しかしホワイトは何もできず、拾った銃も何の役にも立たなかった。
ホワイトに残ったのはブラックを助けられなかった無力感だけだ。
だから悔しい、次こそは必ずブラックを助けようと思う。
これでホワイトの心が少しわかるように思う。
レオナルドは大切な友人だったのは間違いない。
しかしホワイトにとってブラックは何がなんでも助けなければならない存在だった。
3.終わり
ホワイトが自らを幽霊と呼ぶのは生かされ方の問題もあるが、アイデンティティの側面が大きい。
周りみんなが社会の役に立つ力を持っているのに自分にはなにもない。
「こんな私はいなくても誰も困らない」
「誰も私のことなんて認識していない」
だからこそ自分を見てくれる人はそれだけで大切な存在となる。
誰かが見た景色に自分の姿が映りこむ、そのたった一枚がなにより嬉しい。
