アニメキャプチャー解説

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それ声6:小道具:コミックス

それが声優!
第6話「PV撮影」


コミックスについて

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 以前にドラマCDの声優に選ばれて大切な思い出だったものの、アニメ化の際に仲間に自分の役を奪われてしまった主人公・双葉。
落ちこんで『スパイラルカフェのコミックス』を捨てようとするが、先輩に助けられ少し成長する。

 このコミックスは何冊もあり、時間経過を視覚的増加で表現している。
ドラマCD製作当時に13巻まで出ていたとは考えにくく、ある程度の期間ずっとそれが楽しみで買い続けていたはずであり、ここに双葉がスパイラルカフェに寄せる熱量がある。

時間経過を正確に表現するなら基準点を見せる必要があり、回想の時点で「最新の8巻を買った」というような表現があれば時間経過を強く感じられる。

時間経過を視覚的減少で表すのは食べ物などがわかりやすい。
最初に完全な状態で料理が出てきて、それが徐々に減っていく。
時間が経つと視覚的に量が減っていくので、会話しつつ食べ物の量を示せば時間が経っている表現になる。

また、コミックスは何冊もあるため気軽には捨てられない。
もしこれが簡単に捨てられる紙切れだとしたらゴミ箱に入れてしまって終わりだ。
コミックスをまとめて、「明日捨てるまではここに置いておこう」という状況になるからこそ後戻りができる。

 なぜこのような道具が必要かというと、セリフだと表現できないからだ。
「捨てようとしていたコミックスが元に戻されている」から、双葉の精神が回復したことがわかる。
例えばこれなしで「私は大丈夫だから!」といっても信じられない。
セリフは嘘つきなので視聴者に裏を読ませるような表現はやりやすいが、信じられるセリフを言うのは難しい。
ツンデレの代表的セリフに「あんたなんか大ッキライ!」とあるが、このようなセリフは視聴者に「じゃあ好きなんだな」と思わせるのはたやすいが、逆に「キライなんだ」と思わせるのは難しい。

 では、今回の小道具の要素を考えてみよう。
まず感情的になって雑に扱えるのなら、そもそもそんなに大切な物ではなかったのではないか?

 感情的だったとはいえ、なぜ双葉は本をバラバラと落とせたのだろう?

 これはおそらく、大切ではあるが物じたいの価値・希少性はないからだ。
通販サイトでふつうに買えるし、中古でも買える。
今回の話で、実は本当に捨ててしまっていて買い直したという展開もありうる。

 『スパイラルカフェのコミックス』で重要な要素は、思い出そのものではなく思い出を呼び起こす媒介となる道具ということだ。

 一言で表すと「ふつうに買える物で実際に買った思い出の品」になる。
今回の『スパイラルカフェのコミックス』は書店で買えると思うが、これを共演者の先輩・釘宮から直接もらうとダメで、これでは『くぎゅうのコミックス』に変わってしまう。
もちろんこれを本棚から落とせば、先輩をないがしろにするという意味がつく。

「自分が製作に関わった映画のパンフレット等を通販で購入した」場合などは「ふつうに買える物で実際に買った思い出の品」といえる。
当たり前だが「買える物」ということは商品として売り出されている物なので、必ず利益を目的とした商業作品でなければならない。
そして後日、その思い出が壊れる状況になり買ったパンフレット等を壁に投げつけるなり引き裂くなりすればいい。

 後日に思い出が壊れる状況も難しい。
実際には思い出がどうこうなったわけではないが、「ずっとコミックスを買い続けてこの先も声をあてられると浮かれあがっていた自分がバカみたいで悔しかった」というあたりだろう。

双葉はドラマCDのキャストであり、これは商業作品のステップとしては初期にあたる。
つまり双葉が出演していたのがアニメならば、その思い出を壊す状況は作りにくい。
アニメ一期のキャストだったが二期で降ろされたというパターンはあるが、一期に出演していたならその時点で成功しているので感情的になりにくい。
ここにはアマチュアなら仕方ないかもしれないが、プロで感情的になるのは視野が狭いという差がある。

双葉は声優の卵であり、ドラマCDのキャストになれたことが嬉しくてその後の作品にも当然自分が関わるものと思っていたから、どうしても感情的にならざるをえなかった。
おそらくキャラクターに声をあてたら、声優はキャラクターと一体化するような感覚があると思う。
これをはずされるということは、自分のプライドをひどく傷つけるはずだ。

精神の未熟さがあり、今後の期待が強いから裏切られ落ちこむ状況が発生する。