アニメキャプチャー解説

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魂だけのディナー招待客

 一人で食事する星鎖(セイサ)の孤独感がロングショットで表現されている。第三者として食事に招待された視聴者には星鎖を癒せないという無力感が与えられ、それゆえに星鎖を助けてあげたいという感情が強くなる。

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 この場面は、星鎖が食事をしているところだ。テーブルには八つの空席があり、星鎖が一人で食べている。メイドが横に立っているが、食事を共にすることはないようだ。画面左にある窓が黒いので、おそらく時間帯は夜だ。後ろに飾られた風景画が寂しさをあおる。

 ここではロングショットを使って星鎖の孤独感を強調している。ロングショットとは、カメラと被写体までの距離が遠い撮り方であり、画面に自然や建物の割合が多くなる。こうすることで、無機質な部屋と空席の目立つテーブルを視覚的に強調できる。この場面は星鎖とメイドの二人だけなので、カメラは客観的な視点だ。前景にテーブルを挟むことで視聴者は星鎖と向き合って座っている感じになり、小さく表情も見えない星鎖を不憫に思ってしまう。

 この孤独感は、視聴者に「星鎖と近づきたい」と思わせる。視聴者はディナーに招待された客のように席についているが、空席だらけの無機質な画面が無力感を誘う。もしこれがハイアングルからのショットでカメラがテーブルから離れていると、「寂しいなぁ」程度の客観的な感想しか抱かない。カメラが席につくことで「寂しいから何とかしてあげたい」というところまで視聴者の感情を引き出せる。そしてこの感情が主人公・エルナと一致し、クライマックスに向けての動機付けとなる。


ミカグラ学園組曲
第9話「脱線スキャンダル」