アニメキャプチャー解説

映像作品の面白さが1%上がるブログ

観覧車とカーテン

 ブラックと共に映る観覧車の意味は複雑だが、主に運命を暗示する。ホワイトの顔を隠すカーテンは死を連想させ、ただ黙って受けいれるしかないホワイトの受動的な状況を示す。

1.ブラックと観覧車

f:id:animecap0831:20150604191454j:plain
 この場面は、ブラック(絶望王)が遊園地で仲間と集まっているところだ。ストーリーとしては、ここで悪だくみをして終盤に向けて話が大きく展開するといった起点になっている。モブキャラと見分けがつかないくらい小さいが、左下に三人が並んでいる。この場面で一番目立っているのは背景に置かれた観覧車だ。

 この場面ではロングショットが使われ、ブラックが小さく映り観覧車が大きく映されている。このロングショットは登場人物が環境に支配されている側面が大きいことを示している。具体的な意味は状況次第だが、登場人物を取り巻く環境を強調している。

●観覧車の解釈
 解釈には運命の車輪、遊具、心臓のメタファーなどが考えられるが、どれもはっきり区別できるものではなく、いずれか一つに定まるものでもない。つまりすべてを含んでいるという考え方もできる。

 観覧車を運命の車輪と解釈すると、大きな運命の前に何もできないブラックといった意味になる。事の始まりはブラックかもしれないが、大きな出来事が動き出してしまってもうブラックにも止めようがない。この運命の前にはブラックですらただのモブにすぎないといったところだ。

 二つ目は、観覧車を遊具と見る解釈だ。この場面の企みで物語が動くわけだが、そこにある真意は娯楽であるという解釈だ。動機なんてなにもない、ただ楽しみたいから事件を引き起こす。すべてはエンターテインメントといったところだ。

 そして最後は、観覧車を心臓に見立てたメタファーだ。静止画ではわかりにくいが、観覧車の電飾が管のようにめぐっている。その管の中を光が循環し行ったり来たりを繰り返している。つまり電飾を血管にして、観覧車本体を心臓にしているわけだ。ここでは具体的な誰かの生死が思い浮かぶ。

 

2.ホワイトとカーテン

f:id:animecap0831:20150604191559j:plain
 この場面は、ホワイトが胸をおさえて苦しみだすところだ。縦と横の直線で構成された場で、ホワイトの体が大きく曲線を描いているのがわかる。因果関係は不明だが、ある事件がホワイトの身体的な秘密と関わっていたという話だ。

f:id:animecap0831:20150604191624j:plain

そしてホワイトが病室に運びこまれる。ホワイトの顔が布で隠されている。寝ている病人の顔を布で隠すのは、よくドラマで見る遺体にすることと同じだ。実際は生きているが、この絵だけ見ると死んでいるのではないかとも思える。ブラックはそんなホワイトをただ見てる。それも両手をポケットにいれて。ホワイトが死んでしまっても別にかまわない、そんな心が立ち方でわかる。

 ここではホワイトの顔が見えない。ブラックの後ろにカメラが置かれ、ハイアングルから眺めているようなショットになっている。ブラックの顔を見せないなら、もう一人の登場人物、ここではホワイトの顔を見せるのが基本だが、その顔も前景のカーテンで隠されている。服を除けば、見えているのは長い髪と右手だけだ。

 顔は隠れているが、この映し方ではホワイトを推している。しゃべっているのはブラックだが、それを聞いているホワイトの感情が伝わってくる。ブラックはホワイトのことを気にしていない。ただ自分の都合を押しつけて、役に立ってもらえればそれでいいと思っている。だからホワイトの表情なんか気にしていない。また、ホワイトが自分の表情を隠している、つまり拒絶しているとも考えられる。このカーテンはホワイトに対するブラックの価値観が表れていて、同時に視聴者がホワイトの気持ちを察するような仕組みになっている。

 


血界戦線
#09「Zの一番長い日 後編」